2002年 |
漫画家・声楽家 池田理代子さん(著書カバーより)「作者二田原英二氏は研ぎ澄まされた美的感覚に恵まれた彫刻家である。ギリシアの植民都市ネアポリスとしてローマ帝国の末期までなおギリシア文明の馥郁たる香りを守り続けたナポリに多感な青年期を学ばれた。 影があってこその光、悪徳や悩みがあってこその神、醜があってこその美・・・・。その人生の奥深さ、陰影の濃さを知り尽くし、単なるディレッタントにとどまらない本物の教養人たる著者が天性の感性と文才を持って紡ぎ出された絢爛たる美とエロスと芳醇な生の喜び・・・・。 不思議なつながりをもって繰り広げられる八つの物語はまるで壮麗にして輝かしいオペラの舞台に我々を引き込んでゆくようであるこれらの物語が与えてくれる美酒に酔う如きめくるめきは、人生を味わいつくしたおとなにこそ許された特権であるかもしれない。」 |
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2000年 |
聞き手 NHKアナウンサー 山根基世さん(ナレーションより)「18年生活したイタリア。そこで目にした砦の遺跡から着想を得た「砦の女」。遺跡の中にかつて人間の存在を見出し、そこに流れた悠久の時を表わそうとしています。がっちりと構築されたイタリアの建物。昔から変わらない人々の暮らし。イタリアでの二田原さんは確かな存在というものを形にしようとしてきました。 (中略)ブロンズの重厚な光沢と明確な造形。イタリアでの暮らしの中で、二田原さんはあらゆる対象を堅固な存在として捉える彫刻にたどりついたのです。(中略) 帰国後、制作した「縹渺夢」:縹渺とはかすかなもの、そして遥かなものという意味です。堅固な存在を形にしたイタリア時代の作品とはうって変わって、まぼろしのような一瞬の光景を形にしようとしています。 「デルフォイの使者 羽衣の帰還」;高く掲げられたオリーブの枝。日本の羽衣伝説の天女に、ギリシアの美の神の使いのイメージが重ねられています。天を舞うような軽やかさと気品漂う造形美。堅固なものだけが存在するのではない。一瞬の風のような無形で漂うものも確かに存在する。二田原さんの彫刻がたどり着いた境地です。」 |
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1994年 |
9月28日記事から一部抜粋~サンブカ・ヴァッカリ~(食前酒) 「イタリア料理には欠かすことができない食後酒。アルコール度38%の透明なトロッとした甘さの中に、いつまでも残るアニスの香り。(中略)ストレートは平凡。そこで筆者、その秘術を伝授しよう。まずグラスの液体にコーヒー豆を3粒浮べる。火をつける。紫の炎立つ沈黙の20秒、そして香ばしいコーヒーの香り。アニスの芳香。恋する人の瞳を見つめながらグラスの液体をゆっくりと飲み干すのだ。」 |
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1993年 |
4月17日記事から一部抜粋~科学史家 山田慶児氏を語る~ 「ところで僕は少年の日に、すでに人間様に化けて久しい畏(おそ)るべき河童に出会ったのだ。久留米の明善校で机を並べていたのだ。畏友と呼ぼう。(中略)畏友は「夜鳴く鳥」という不思議な書を送ってきた。僕は飛び上がって驚愕した。河童はついに己の遥かなる故郷、古代黄河文明の呪文呪術の謎を解き明かしたのだ。衝撃は大きかった。 僕はあわてて古代ギリシアの淵源、ミュケナイへ飛んで行った。河童は立て続けに「黒い言葉の空間」で僕を宇宙呪文の罠にかけてしまった。こうして僕の中に「玄い空間の詞」という彫刻展の詩想が生じた。(後略)」 |
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