人間が人間であろうと歩み始めた始原の日、人間は微笑みながら地上に立ち、その一歩を踏み出しながら、目の前に広がる茫漠の世界に視線を注いでいた。それが人間であろうとする第一歩であった。古代ギリシャの大地に微笑みながら立ち上がる人間(ペルソナ)、世界を美しいと見るよう預託された人間(ペルソナ)。
最早、それ以外の何かであることはない。こうした人間(ペルソナ)=自分で在り続けようとしてきた不思議を映し視る彼が残った。
気が付くとそれだけが唯ひとつ、ひと時の彼の生命(いのち)の流れに黙ってついてきた言葉があった。言葉は、時の流れに映る彼の姿影の奥にいつも在った。『神(ディーオ)』
抒庵