Sculptor Eiji Nitahara

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古代ギリシャ、人間(ペルソナ)そして神=表象との出会い

     世界(宇宙)を抽象形象の中に閉じ込める他なかった長い玄渺の季節、内観の中に浮上してくる人間(ペルソナ)の表象も整合形体として浮上してくるには程遠く、ただ幾何学的抽象形象に閉じ込める外なかった。世界は内にも外にも玄々渺々、冷たく礫砂の連鎖に結びついていた。総ての命はその抽象表象の中にほとんど氷結して閉じこもっていた。

漸く移動の旅が始まった。太陽と海と空とオリーブ樹の国へ。深い大きな驚きが奥の方から起こった。始めは何であるか不明であった。表象のスクリーンに幾何学抽象形が始動の気配を見せていた。長い時の堆積の中に眠っていた原初の生命の息吹が少しずつ目覚めようとしていた。それは結晶体であった生細胞があだかも溶解するように少しずつ形を変え運動を始めた。予めその形質に組み込まれていた秩序が動き始めた。生命の感覚が目覚めていた。感覚は遠い原初の昔に夢見ていた生命の形象が何であるかを恐る恐る探し始めようとしていた。岸辺打つ潮の音に,樹々にそよぐ風の音に、大空の星の座に、自らの生命に呼応する呼吸やリズムのあるのを確かめるように、原像が外なる世界の美しい自然に相応しい何かの形象に姿を現すだろうと感じながら、自らの中に流れる人間の生の感覚が根源に於いて美しく喜びであるのを確かめながら、それに興奮を覚えながら、おぼろに視えてこようとするその表象に形を与えようとしていた。生命力に溢れ力みなぎる人間(ペルソナ)、美しい原像(アルケー)、その人間(ペルソナ)の原像(アルケー)を彼は夢見るように神々の姿に重ね合わせていた。限りなく神々の姿に近い人間(ペルソナ)、曙光の輝きを増すにつれ輪郭を鮮明に現わにしてくる原像(アルケー)、人間(ペルソナ)、そして神々.玄渺の暗がりから出て真昼の太陽に向かう人間(ペルソナ)と神々、ホメーロスはそれを吟唱する。                           

抒庵

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彫刻家二田原英二公式ホームページ